2年ぶりに郊外の桜並木のそばの喫茶店に行った。
大きなガラス窓から見える桜の木は、花が殆ど散り 若葉が出始めた。その桜並木にかろうじて一本の 八重の桜がのんびりと花の終わりを告げているようだ。
私は珈琲を注文して それを飲みながら暫くの間、窓の外を眺めてその八重の桜にくぎつけになる。風に促されてか、花びらが はら はら と舞う。何度も何度も繰り返しながらギャラリーを楽しませる。そして風が吹く度にひっそり静かに散ったり、或いは騒々しく 花吹雪で乱舞していたり、して見せてくれた。
よく桜は咲いてよし、散ってよし、等と、言われるが こうも人を楽しませる花は無いように思う。巷の騒々しい嘆かわしい暮らしの中で一時 我を忘れて屈託の無い時間に心やすまった。
(久方の光のどけき春の日に しづこころなく 花の散るらん)